2013年3月30日土曜日

毎日新聞社説:日本とモンゴル 地球儀を眺めるように


毎日新聞 2013年03月29日 02時30分 
 
 安倍晋三首相がこの週末にモンゴルを訪問する。それに先立ち28日には横綱・白鵬関が首相官邸に安倍首 相を表敬訪問し、モンゴルの満天の星の美しさなどについて語り合ったという。大相撲のモンゴル人力士の大活躍や蒙古(もうこ)斑など、日本とは古くからつ ながりもゆかりも深い国だ。その絆を一層深めたい。

 かつて社会主義国家として旧ソ連の影響下にあったモンゴルは、90年代初めに自由選挙を実施して民主化 した。日本は支援を続け、10年度までの政府開発援助(ODA)供与額2114億円は対モンゴル援助国中第1位。モンゴルの対日感情は極めて良く、モンゴ ル国立大学が04年に実施した世論調査で、日本は「最も親しくすべき国」のトップだった。日本語学習熱も高い。

 中国とロシアに南北をはさまれた草原の大国モンゴルは、地政学的に極めて重要な位置にある。また、石炭やレアメタルなど資源も豊富で、良質な原料炭があるタバン・トルゴイ炭田開発計画には日本も参画する方向で話が進んでいる。

 そのモンゴルは今、中露両国の間に埋没しないためにも西側への接近を強めている。とりわけ日本のことは「第3の隣国」と呼び、初の経済連携協定(EPA)を日本と結びたいとして既に交渉入りするなど、対日期待感は非常に強い。

 最近では、政治・安全保障の分野での連携強化も日本に求めてきている。昨年秋に日朝政府間協議がウランバートルで開かれたのも、単なる場所貸しを超えた、モンゴルの対日協力姿勢の表れである。

 こうしたモンゴルからの「ラブコール」に、日本はもっと積極的に応える必要がある。日本はモンゴルと 10年に戦略的パートナーシップの構築で合意し、政治や経済の分野だけでなく文化・人的交流を進めているが、まだ十分とは言えない。日本からは7年ぶりの 首相訪問となる機会を、この大事な親日友好国との関係強化につなげてほしい。

 安倍首相は「外交は単に2国間関係だけを見つめるのではなく、地球儀を眺めるように世界全体を俯瞰(ふ かん)して戦略的な外交を展開していく」(所信表明演説)と強調している。その観点から言えば、今回の首相のモンゴル訪問は4月末に見込まれるロシア訪問 と5月に想定される日中韓サミットにつながる、対外戦略の一環だ。日露、日中関係をにらむ、大きな外交ゲームの布石でもある。

 国際社会で信頼できる仲間を増やし、外交の裾野を広げれば、対外的影響力も高まるし、近隣諸国との2国間関係にもプラスになる。モンゴルの民主化を支えることは、まさにそういうことであろう。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130329k0000m070145000c.html

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