2013年4月4日木曜日

読売社説:安倍外交 モンゴルと戦略関係の強化を

3月31日

 親日友好国モンゴルと日本が戦略的な連携を強化する一歩になった。

 安倍首相がモンゴルを訪問し、アルタンホヤグ首相、エルベグドルジ大統領と相次いで会談した。

 両国首脳は、外交・安全保障分野での外務次官級の対話を開始することで一致した。さらに、米国も加えた3か国の政策対話を行うことでも合意した。

 安倍首相は、アジア外交の原則として民主主義など普遍的価値の尊重や自由でオープンな市場経済を掲げている。

 中国とロシアに挟まれたモンゴルが、民主化と市場経済を発展させることは、日本の外交戦略にもプラスである。威圧的な外交で周辺国の主権を脅かす中国へのけん制にもなるだろう。

 安倍首相は北朝鮮問題、とくに日本人拉致問題での協力を求めた。モンゴル側も日本の立場への理解と支持を表明した。

 モンゴルは、冷戦時代には北朝鮮とは盟友関係にあり、今も高いレベルで交流を続けている。
 2012年11月に日朝協議がウランバートルで開かれたのも、モンゴルの協力があったからだ。
 政府は膠着(こうちゃく)状態にある拉致問題解決に向けて、モンゴルとのパイプを大いに生かす必要がある。

 資源に乏しい日本にとって、モンゴルとの関係は、エネルギー安全保障の観点からも貴重だ。
 モンゴルは、石炭やレアメタルなど良質で豊富な天然資源に恵まれている。鉱山開発などをテコに11年は年率17%を超える高度経済成長を達成した。

 首脳会談では、モンゴル南部のゴビ砂漠にある世界最大級のタバントルゴイ炭田の共同開発についても意見を交換した。モンゴル側は、「長期にわたり安定的に日本に石炭を供給できるようにしたい」との意向を示したという。

 モンゴルには、日本や韓国に石炭を輸出するため、中国やロシアの海港へ運ぶ構想がある。それには資源を輸送するための鉄道を建設することが欠かせない。

 ただ、日本企業が開発やインフラ整備で進出するにはモンゴル側の投資環境の整備が必要だ。日本とモンゴルの当局間で協議を重ねる必要がある。

 会談で、安倍首相は横綱白鵬らの活躍ぶりにも言及した。日本では、大相撲を通じてモンゴルへの関心が高まっている。モンゴルにとっても日本は中露に次ぐ「第3の隣国」だという。
 
 政治、経済とともに文化・スポーツでも交流を深めたい。

(2013年3月31日01時43分  読売新聞)
 
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130330-OYT1T01830.htm

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