2012年11月28日水曜日

北朝鮮を受け入れる国モンゴル

ソウル支局 門間順平

 
帰国便搭乗のためウランバートルの空港を訪れた北朝鮮の宋日昊・日朝交渉担当大使(門間撮影)

 日本と北朝鮮の外務省局長級による4年ぶりの政府間協議が開かれたモンゴルに出張したときのこと。

 ウランバートルの旧国営百貨店で、見慣れないものを見つけた。外国人観光客向けのモンゴル特産品が並ぶ一角に陳列してある北朝鮮の国旗だ。2国間会談の場でテーブルの中央に置かれているそれで、反対側には日の丸がぶら下がっていた。

4年ぶりの日朝政府間協議会場となったモンゴル政府の迎賓館前で到着を待つ報道陣(門間撮影)

 1992年の憲法改正で社会主義から転換したモンゴルは、もともと北朝鮮の友好国だ。1948年には外交関係を樹立している。1990年に外交関 係を樹立した韓国より42年も前のことだ。今回のモンゴルでの日朝政府間協議の開催は北朝鮮側による提案で、北朝鮮代表の宋日昊(ソン・イルホ)日朝交渉 担当大使は、モンゴル政府が用意したウランバートル郊外の迎賓館に宿泊。2日間で計約11時間に及んだ協議にも迎賓館が提供され、市内のホテルから迎賓館 に向かう外務省の杉山晋輔・アジア大洋州局長の車にはパトカーの先導が付いた。

 中国、ロシアという2つの大国に挟まれたモンゴルは、人口わずか270万人。そのための危機感からか、「地域の外交、安保で積極的に存在感を示したいという思い」(日本外務省関係者)が強く、今回の協議の「誘致」につながったというわけだ。

 さて、百貨店で、向かい合う日朝両国の国旗を見て何を思ったかというと、世界には北朝鮮と外交関係を持っている国があり、普通に受け入れている 人々がいるということだ。当然のことなのだが、国交のない北朝鮮と接する機会が少ないうえ、拉致や核実験、長距離弾道ミサイル発射により、嫌悪感が先行し てしまう日本人には想像しにくいことだろう。

 韓国でも同様に、北朝鮮は近くて遠い。韓国では「国家保安法」により北朝鮮を賛美するような行為や言動は処罰の対象となり、一般の人が北朝鮮の運営するウェブサイトに接続することも制限されている。

 こうした日韓に対して、ウランバートルの市民はニュートラルだ。40歳の女性は、北朝鮮について聞くと「何とも思わない」と笑った。

 ただ、モンゴルにとって、かつての同盟国・北朝鮮も「普通の国」に成り下がってしまったということでもあり、それは「金日成(キム・イルソン)金正日(キム・ジョンイル)主義」という旧体制を固守する北朝鮮の衰退を表していると言えるのかもしれない。

 件の百貨店には、北朝鮮代表団一行も、帰国を前に訪れていた。彼らが、もし、対になった日朝の国旗を見ていたら、何を思ったのだろうか。

(2012年11月26日  読売新聞)
 
http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/columnworld/20121122-OYT8T01034.htm?from=navlk

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